特許法の第188条には、虚偽表示の禁止という規定があります。この条文は、簡単に書けば、特許を受けてない物に対して、その物や包装や広告に、その物が特許を受けてますよ、と表示してはいけないことを規定した条文です。具体的な条文は次のとおりです。

(虚偽表示の禁止)
第百八十八条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
 特許に係る物以外の物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
 特許に係る物以外の物であつて、その物又はその物の包装に特許表示又はこれと紛らわしい表示を付したものの譲渡等又は譲渡等のための展示をする行為
 特許に係る物以外の物の生産若しくは使用をさせるため、又は譲渡等をするため、広告にその物の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為
 方法の特許発明におけるその方法以外の方法を使用させるため、又は譲渡し若しくは貸し渡すため、広告にその方法の発明が特許に係る旨を表示し、又はこれと紛らわしい表示をする行為

この条文を反対に解釈すれば、特許を受けている物であれば、その物や包装や広告に、その物が特許を受けてますと表示しても良いということになります。

しかし、たとえ特許を受けている物であっても、特許を受けていることを表示してはいけない、と自主規制を置いている業界があります。その業界が化粧品業界です。

化粧品業界の団体に、化粧品の製造業者によって設立された団体である日本化粧品工業連合会があります。日本化粧品工業連合会のサイトには、広告表現として規制及び遵守されるべき事項をまとめた「化粧品等の適正広告ガイドライン」という文書が掲載されております。

「化粧品等の適正広告ガイドライン2017年版(第2刷)(2017年9月6日)」という文書の29ページ目には、特許に関する記載があります。以下に引用します。

F11.3 特許について
「特許」に関する表現は、事実であっても行わないこと。

なお、特許に関する権利の侵害防止等特殊の目的で行う広告は、化粧品等の広告と明確に分離して行うこと。

化粧品等の適正広告ガイドライン2017年版(第2刷)(2017年9月6日) 29ページ目より引用

化粧品自体や化粧品の製造方法に特許を受けているということが事実であっても、化粧品の広告表現としては、原則として特許を受けているという表現を用いてはいけないのです。

この理由は、化粧品等の適正広告ガイドライン2017年版(第2刷)(2017年9月6日)の67ページに記載されておりますが、「「特許」等の文字を記載することは、当該製品の製造方法、効能効果等について誤解を招くおそれがある」との理由だからです。
(ただし、「方法特許」又は「製法特許」の文字及び特許番号並びに特許発明にかかる事項を併記して正確に表示する場合は認められるとのことです。)

このように、特許法の条文上では、特許を受けている物の広告に特許を受けていることを表示しても問題がないものの、業界の自主規制等により、特許を受けていることを表示しないことを取り決めている場合もあります。

こういった取り決めがある業界として、化粧品業界があるということを知ったので取り上げてみたのですが、他の業界で同様に取り決めがある業界を知りません。もし見つけたら、このブログで取り上げたいと思います。

この記事を書いた人

nakamura
nakamura弁理士